SX2462Wで10ビット表示を実現するには、10ビット対応のグラフィックスカードとDisplayPortで接続し、対応ソフトウェアを用いる必要がある。10ビット表示対応のグラフィックスカード自体は数年前から販売されているが、DisplayPort規格の立ち上がりとともに、汎用ディスプレイでのサポートもようやく始まった形だ。
現状ではエーキューブが、AMD(ATI)のグラフィックスカード「FirePro V3750」「FirePro V5700」「FirePro V7750」「FirePro V8700」「FirePro V8750」の5製品において、SX2462WもしくはCG243Wとの接続時に10ビット表示が可能であるとの動作確認情報を公開している。今回の10ビット表示環境構築には、エントリーモデルのFirePro V3750を利用した。
AMDのワークステーション向けグラフィックスカード「FirePro 3D」シリーズにおいて、DisplayPortを搭載したエントリーモデルが「FirePro V3750」だ。
PCI Express 2.0 x16スロット用のグラフィックスカードで、320基のシェーダーユニット、メモリ帯域22.4Gバイト/秒の256MバイトGDDR3メモリを搭載し、RGB各色10ビットによる合計30ビット精度の表示パイプラインも備えている。シェーダーモデル4.1、OpenGL 3.0、DirectX 10.1に対応する。
インタフェースはDVI-I×1(デュアルリンク対応)、DisplayPort×2を搭載。映像の入力から出力まで、ハードウェア内部も10ビットで信号処理がなされる。カードサイズは167.64×111.15ミリに収まっており、外部電源コネクタの接続は不要で、占有するスロット数も1基で済む。FireProシリーズとしては求めやすい価格設定も合わせて、導入しやすい製品だ。国内ではエーキューブが取り扱っている。
FirePro V3750を組み込んだテスト用PCは、PCI Express 2.0 x16スロットが備わった自作のタワー型PCだ。OSは32ビット版のWindows XP Professional(SP3)、グラフィックスドライバ「ATI Catalyst」のバージョンは原稿執筆時での最新版(8.634.0.0)としている。OSにWindows XPを利用したのは、後述の10ビット対応ビューワソフトがWindows VistaやWindows 7、Mac OSに対応していないからだ。
PCに装着したFirePro V3750をSX2462WとDisplayPortで接続し、グラフィックスドライバを組み込んだ後は、ユーティリティソフトの「Catalyst Control Center」で10ビット表示の設定を行う必要がある。といっても、難しいことは何もない。「グラフィック設定」タブ内にある「ワークステーション」の「設定」メニューに、「10ビットピクセルフォーマットサポートを有効にする」という項目があるので、これをチェックして「OK」をクリックするだけだ。後は再起動後に10ビット表示が適用される。
ここで注意しなければならないのは、以上の環境を整えてもWindowsのデスクトップ表示やWindows上で動作するアプリケーションのほとんどが8ビットの表示に制限されるということだ。WindowsもMac OSもGUIの表示は8ビットを想定しており、その上で動作するアプリケーションも基本的には表示色が8ビットとなる。
Windowsの例を挙げると、Windows XPまでのGDIによるデスクトップ表示はもちろん、Windows VistaやWindows 7に採用されている描画システムのDesktop Window Manager(DWM)によるデスクトップ表示についても、8ビットを超える表示色はサポートしていない。ただし、デスクトップ表示を介さず、DirectXでフルスクリーン表示を行うアプリケーションに関しては10ビット表示が可能だ。もっとも、現状でエンドユーザーが利用するようなアプリケーションにおいて、このような10ビット表示に対応した製品はまずない。
多階調の画像を編集可能なアプリケーションの代表格といえば、アドビシステムズのPhotoshop CS4が挙げられるが、こちらについても16ビットや32ビットの画像データを扱えるものの、ディスプレイへの8ビット超出力については動作保証外となっている。日本AMDによれば、2009年9月時点でFireProシリーズはPhotoshop CS4での10ビット表示を公式にサポートしていないが、今後公開されるドライバでサポートする計画があるという。
こうした事情から、今回はSX2462Wで10ビット表示を行うにあたり、同一画像を10ビット表示と8ビット表示で並べて閲覧できるFirePro用のビューワソフト(サンプルソフトで一般には未発売)を利用した。これはOSのデスクトップ描画システムを介さず、OpenGLで直接画像データ部分を画面に出力することで、Windows XP上での10ビット表示を可能としたものだ。
以上のように、8ビット超の表示環境に関してはコンテンツとなる画像データとハードウェアのサポートが整いつつある一方で、アプリケーション側が追いついていないような状況だが、今後は少しずつ対応が進むことが予想される。その追い風の1つになりそうなのが、Windows 7に搭載された新機能の「High Color」だ。High Colorと聞くと、従来からある6万5536色だと思うかもしれないが、これとはまったく異なる。
ここでのHigh Colorとは、8ビット超の色情報がある画像データをWindows 7上で扱うために用意された一連の機能のことだ。10ビット/16ビットの色数やsRGBを超える広色域に対応し、Windows 7のグラフィックスドライバ仕様であるWindows Display Driver Model(WDDM) 1.1における必須仕様にも定められている。
前述の通り、Windows 7でもデスクトップ自体の描画は8ビットになるが、今後は開発者がWindows 7のHigh Colorサポートを活用することで、フルスクリーンで10ビット表示が可能なアプリケーションが増えることも期待できそうだ。マイクロソフトによると、Windows 7ではスクリーンセーバーやWindows Liveフォトギャラリーのフルスクリーン表示において、High Colorの8ビット超画像データを確認できるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:株式会社ナナオ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2009年9月30日